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採用DXとは? 中小企業こそ取り組むべき採用のデジタル化

中小企業の採用DXに必要なこととは?

ビジネス環境が大きく変化した今、デジタルツールを活用することで、既存業務の効率化や事業自体の抜本的な革新を図ろうという企業DX(デジタル・トランスフォーメーション)は必要不可欠となっています。

なかでも人材採用領域におけるDXとして採用DXが注目されています。とりわけ中小企業では人材や資金の不足や、変化への提供や認識の甘さなどから進展が遅れています。そこで本記事では、採用DXの基本から、中小企業が採用DXに取り組むためのステップまで説明します。

採用DXとは何か?

人材採用領域のDXとは具体的にどういったものかイメージが湧かない方も多いでしょう。ここではDXの概念と、人材採用におけるDXの定義まで簡潔に解説します。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは

DXという言葉は、昨今あらゆるビジネスシーンで聞かれるようになりましたが、抽象的な概念であるが故に、人や企業によって解釈が異なっている印象は否めません。

経済産業省ではDXを次のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

引用:経済産業省|デジタルガバナンス・コード2.0

つまりDXとは、データやデジタルを用いてビジネスのルールやプロセスに変革を起こし、競争力を強化することで売上や利益を向上させることを意味します。そのため、単にデジタルツールを導入することは本来のDXではなく、業務効率化の範疇に留まります。

DXの本質は、デジタル活用によりビジネスのあり方そのものを変革し、競争優位を築くことだからです。

人材採用におけるDXとは

人材採用領域におけるDX(採用DX)とは、採用活動においてデジタル技術を活用し、優秀な人材を安定的に採用することを指します。DX同様、デジタルツールやサービスの利用は手段に過ぎず、成果を出すこと(求める人材の採用)が目的となります。

採用DXで重要なことは、CX(Candidate Experience:候補者体験)と、EX(Employee Experience:従業員体験)の両面から検討することです。

CX(候補者体験)とEX(従業員体験)が重要な理由としては、両者を向上させることで、採用候補者の視点で選ばれる企業になることと、従業員体験を向上させることで入社後のミスマッチを減らし、満足度を上げることが採用強化に繋がるからです。

続いて、CXとEXについて詳しくみていきましょう。

採用DXについて

CX(候補者体験)とは

CXは、採用候補者が企業のことを知ってから選考を終了するまでのすべての体験を指します。たとえば、説明会や面接をオンライン化したことで、参加ハードルが下がりエントリー数が増えた場合は、CX向上につながっているといえるでしょう。

EX(従業員体験)とは

EXは、企業の従業員が業務を通して得られるすべての体験を指します。たとえば、充実した福利厚生や休暇の取りやすさなどによって離職率が低減した場合は、EX向上につながっているといえます。

採用DXが求められる背景とは

IT技術の急速な発展や新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、これまで常識とされていたビジネスの在り方が見直されつつあります。

とりわけ人材採用においては、労働力の減少や企業の採用活動の変化、SNSや口コミサイトの普及によってデジタル活用がますます重要になっています。それぞれの背景について詳しく解説していきます。

労働力の減少による人材採用難

日本の生産年齢人口(15〜64歳)の減少は採用DXが求められる要因のひとつです。内閣府が公表した「令和4年版高齢社会白書」によると、国内の生産年齢人口は1995年をピーク(8,716万人)に減少の一途を辿っており、2021年では7,450万人となっています。

さらに、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)になると見込まれています。急速な労働力の減少の影響から、あらゆる産業で人手不足の深刻化が懸念されています。

出典:高齢化の推移と将来推計(総務省)
引用:総務省|高齢化の推移と将来推計

労働力が減少すれば、当然採用難易度が高まります。数年前に比べて応募数が激減したという中小企業は珍しくありません。そうしたなかで今までとは違った採用手法が求められています。

企業の採用活動の変化

従来の採用活動では、求人広告媒体の掲載や人材エージェントからの紹介といった採用手法が主流でした。しかしながら、こうした採用手法では多額の採用コストが発生します。

とりわけ大手企業のように社内リソースや採用予算が潤沢ではない中小企業にとっては、求人広告に予算を割けなかったり、せっかくお金をかけて求人広告を掲載しても採用につながらないケースも珍しくありません。

また、採用専任担当者がいないため、きめ細やかな応募者対応などができず、採用活動が煩雑になっているケースもあります。そうしたなかでデジタル化により、採用業務の負荷軽減や採用にかける費用の抑制が求められています。

SNSや口コミサイトの普及

SNSは今やコミュニケーション手段として私たちの生活に浸透しています。総務省「通信利用動向調査」によると国内のSNS利用状況は全年齢で78.7%となっており、15〜64歳に限れば8割を超えています。

出典:年齢階層別SNSの利用状況(総務省)
引用:総務省|年齢階層別SNSの利用状況

転職市場においても、求職者は求人広告に掲載されている情報だけでなく、ホームページやSNS、口コミ情報なども確認し、慎重に応募先を選ぶ傾向にあります。

そのため、企業は採用に特化したホームページを制作したり、各SNSを通じて自社の魅力を継続的に発信することが重要になっています。

▼採用ホームページについては、こちらのコラムでご紹介していますので、ぜひご参考にしてください

採用サイトの役割と効果とは?作成・運用の秘訣採用サイトの役割と効果とは? 採用に繋がる作成・運用の秘訣も解説

採用DXに取り組むメリット

採用活動におけるデジタル活用と聞くと、一部の大手企業が取り組むことで、中小企業には関係ないだろうと思われるかもしれません。

しかしながら、採用DXは大手企業ほど採用活動に予算を割けない中小企業こそ取り組むべき施策です。ここでは、採用DXに取り組む主なメリットを解説します。

採用のミスマッチを減らせる

採用DXに取り組むことで、採用のミスマッチを減らすことが可能です。たとえば、適性検査ツールを活用することで、求職者のスキルや経験を的確に評価し、自社の採用要件に適合する人材を見つけることが容易になります。

また、採用管理システム(ATS)を活用することで、どの求人パターンの反響が良かったか社内で分析・検証できるため、より質の高いアプローチが可能になります。

採用活動の負担を軽減できる

メッセージングやスケジュール管理、応募者管理などのデジタルツールを用いることで、採用担当者の手作業を大幅に軽減し、より効率的な採用活動を行うことができます。

たとえば、応募者への返答や面接のスケジューリングなど、一部の作業を自動化することが可能です。

採用活動力を高められる

採用管理システム(ATS)を導入することによって、自社の採用活動状況を見える化します。求人閲覧数、応募率、面接来社率、採用決定率などを定量で把握すれば、自社の採用課題を特定できます。

課題に対して打ち手を検証し、改善策を実行することで採用活動力が高まり、より効率的に採用活動を進められるでしょう。結果として、優秀な人材確保やミスマッチによる早期離職の抑制が期待できます。

自社のブランド力を高まる

応募対応やFAQなどをデジタル化することで、求職者とのコミュニケーションがスムーズになり、良好なCX(候補者体験)を提供できます。

採用におけるブランド力とは、ネームバリューや待遇のよさだけとは限りません。良好なCXを提供することで自社に好印象を持ってもらえば、優秀な人材が集まりやすくなります。

採用DXの具体例

採用DXとはどういった取り組みのことかイメージできない方も多いでしょう。ここでは、具体的な取り組み例をいくつかご紹介します。

採用管理システム(ATS)による採用活動の見える化

採用管理システム(ATS)とは、候補者情報管理、面談日程調整、採用進捗管理など、採用活動におけるタスクを効率的に管理するWEBシステムです。

採用管理システム(ATS)を導入することで、選考プロセス全体が見える化され、各段階での問題点や改善点を明確に把握できます。また、メッセージング機能やSNS連携により候補者との円滑なコミュニケーションが可能になり、CX(候補者体験)向上につながります。

SNS活用による候補者とのコミュニケーション効率化

今やSNSは生産年齢人口(15〜64歳)の8割以上が利用しています。採用活動にSNSを活用することで、より多くのユーザーに自社の情報を発信でき、採用ターゲットとなる候補者層に直接メッセージを送ることも可能です。

また、企業の文化や価値を発信し、求職者との関係を深めるプラットフォームとしても機能します。候補者に採用動画を送ることで、志望動機の向上を図ることが可能です。

また、Eメールに比べてSNSでのメッセージの方が、カジュアルかつ円滑にコミュニケーションを取れるため、選考辞退を抑制も期待できます。

リファラル採用ツール導入により社員紹介人数のアップ

リファラル採用とは、自社の従業員や関係者に知人や友人を紹介してもらう採用手法です。専用ツールを導入すれば、紹介のハードルを下げ、従業員の協力意欲を高めることができます。

リファラル経由での採用人数を増やすことで、採用ミスマッチの軽減や、採用コストの抑制につながります。

採用DXを推進するためのステップ

では、採用DXを進めるにはどのような手順で行えばよいのでしょうか? ここでは採用DXを推進するための5つのステップを紹介します。

1.採用の目的とゴールを明確にする

採用DXを始めるにあたり、そもそも何を達成したいのか、どういった状態がゴールなのかを明確に定義することが大切です。採用効率の向上、採用コストの削減、採用品質の改善など、具体的な目標数値とあわせてゴールを設定します。

2.現状のCXとEXを整理し課題を設定する

現在の自社の採用活動をすべて洗い出し、個々の活動単位でのCX(候補者体験)とEX(従業員体験)を分析します。

CXの具体的な分析方法としては、新入社員に対して選考当時の印象をインタビューしたり、候補者のペルソナ(架空の候補者)を設定します。

一方、EXの分析方法としては、従業員アンケートを取ることや自社の口コミを参考にすることが挙げられます。CX・EXそれぞれの課題や問題点を把握し、それを解決するための戦略を立てます。

3.課題解決に向けた情報収集を行う

特定した課題に対して、どのようなデジタルツールやITソリューションが利用可能か調査します。それぞれのツールがどのような機能を持ち、どのような価値を提供できるのかを理解することが重要です。

また、同業界かつ同等規模の他社で、自社と同じ課題を解決した事例を調査し、どのようなプロセスで課題解決につながったかを確認しましょう。

4.課題に合ったデジタルツールを比較検討する

解決策が決まったら、候補となるツールをすべてリストアップします。各ツールの機能、コスト、サポート体制などを比較し、最適な選択をします。

機能が充実しているからといって、自社にとって不要な機能が多ければかえって使いにくくなります。ツールによっては無料トライアルを実施している場合もあるため、実際に触れてみて操作性に問題がないかも含めて確認しましょう。

5.検証・改善を繰り返す

ツールを導入した後は、その効果を定期的に評価し、必要に応じて採用活動を見直しましょう。採用活動では、応募数・返信率・面接率などの段階ごとに数値目標を設定して、その達成に向けて検証と改善を繰り返すことが肝になります。

採用DXはツールを入れて終わりではなく、継続的な改善を通じて自社が掲げるゴール達成へと着実に近づいていくことが重要です。

採用DXに失敗しないための注意点

中小企業は大手企業に比べて、社内リソースや予算が限られています。そのため、大手企業と同じように取り組んでも思うような成果は得られないでしょう。

いかに創意工夫をするかによって採用DXの成否が決まります。ここでは、中小企業が採用DXに失敗しないための注意点を解説します。

複数製品で比較検討する

デジタルツールを導入する際は、複数の製品を比較検討し、自社のニーズに最も適したものを選択することが重要です。

いくら評判の高いサービスでも自社に合うかどうかは別です。そのため、ひとつのサービスに固執せず、さまざまなサービスを比較検討して、最終決定することが求められます。その際、機能面だけでなく、サポート体制や利用費用、セキュリティ対策なども考慮しましょう。

まずは小さく始める

大規模なシステム導入は時間やコストなどのリスクも大きくなります。まずは一部のプロセスや部署から始めて、その効果を確認しながら段階的に拡大すると安全です。

ツールを導入する際も、無料トライアルがあれば積極的に活用し、操作感も含めて確認しましょう。

社内全体を巻き込む

採用DXは組織全体で取り組むべき課題です。大手企業ほど社内リソースが潤沢ではない中小企業では人事部門がなかったり、中には経営者が孤軍奮闘しているケースもあるでしょう。

しかし採用DXとは、デジタル活用によって採用活動力を高め、優秀な人材を採用することです。だからこそ、社員全員が採用の目的やゴールを理解し、社員が積極的に採用活動に関与することが大切です。

結果として、CX(候補者体験)向上や企業ブランディングの向上がもたらされるでしょう。

まとめ

本記事では、採用DXの基本から、中小企業が採用DXを推進するためのステップと注意点を解説しました。採用DXは、ミスマッチの減少、負担の軽減、採用力の向上、ブランド力の強化といったメリットをもたらします。

しかしその実現を果たすためには、採用の目的を明確にし、適切なツールを導入し、社内一丸で取り組むことが重要です。またツールを導入する際は、複数のサービスを比較検討し、まずは小規模から始め、定期的な検証を行うようにしましょう。

とくに中小企業が採用DXに取り組むことは、優秀な人材の獲得につながるだけではなく、自社のイメージアップなど企業ブランディングとしても好影響をもたらします。オンライン化が普及した今だからこそ積極的に取り組んでいただくことをおすすめします。


<記事監修:高橋 洋介>

リクルートと広告代理店にて求人広告営業に従事。主に中小企業を中心としたアルバイト・中途社員の採用支援を行う。在職中にGCDFキャリアカウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント資格も取得。独立後はフリーランスとして企業の採用実務支援から、Webマーケティング支援など幅広く活動している。